株式会社ハーモテック「不安定という名の安定」を選べ──ニッチトップメーカーが挑む、製造業の常識への逆襲

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代表取締役

岩坂 斉

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株式会社ハーモテック
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株式会社ハーモテックとは?

株式会社ハーモテックは、半導体製造に欠かせない「ウェハー」を、面に触れずに空中に浮かせた状態で搬送する製品を開発・製造している山梨県の機械メーカーです。独自の特許技術を武器に、大手企業の下請けではなく、自社ブランドの製品を国内外の一部上場メーカーへ直接納めています。

取引先には東芝系の半導体メーカーや、半導体製造装置メーカーの東京エレクトロン、さらには韓国のサムスンなど、名だたる企業が並びます。製品はお客様を通じて世界中に広がっており、まさに「ニッチトップ」を体現する存在です。

同社の魅力は、単に製品を売るのではなく、お客様の困りごとを徹底的に聞き、情報から解決策までを提供する「コンサルティングメーカー」であること。製造業は儲からないという常識をひっくり返し、世界で勝てる強い会社を目指す、その挑戦の物語を岩坂社長に伺いました。

株式会社ハーモテック|【株式会社ハーモテック】「「不安定という名の安定」を選べ──ニッチトップメーカーが挑む、製造業の常識への逆襲」

空中に浮かせて運ぶ──ハーモテックの技術とは

取材担当:青山浩輔

ホームページを拝見したのですが、事業内容が私の頭では少し難しく感じました。改めて、今どんなことをされているのか教えていただけますか。

株式会社ハーモテック 代表取締役:岩坂 斉

半導体を作る工程では、シリコンという材質の円盤状のものに配線をしていき、最終的に切り出して一つのチップになっていきます。私たちは、その丸い円盤状のウェハーと呼ばれるものを、面に触らないで空中に浮かした状態で運ぶことができる製品を作っています。

面に配線をしていくので、ゴミや傷をつけたくない。だからこそ「触らない」というメリットがあります。この触らないで搬送するという基本的な特許を持って、製品を販売しています。

仕組みとしては、お椀状のものの中で空気を出すと、竜巻のような回転する空気が生まれます。台風でも竜巻でも真ん中の圧力が下がるので、ウェハーが吸い寄せられる。しかし空気を出し続けているので、私たちがいう「ハンド」に触れずに浮いた状態を保つことができます。非常に特殊なものです。

取材担当:青山浩輔

取引先も相当大きな企業だと伺いました。

株式会社ハーモテック 代表取締役:岩坂 斉

私たちは大手企業の下請けはやりません。お客様は大手企業ですが、あくまでも私たちの製品が必要だから買っていただきます。メーカーとして、自分たちのブランドで製品を売っていくやり方です。

特許は国内と海外で取得し、模倣されないよう、また付加価値を高めるために進めています。取引先は基本的に一部上場メーカーで、東芝系の半導体メーカー、装置メーカーの東京エレクトロンなどに納めています。国内のほか、韓国・台湾・アメリカにも取引があります。

東京エレクトロンに納めると、そこが世界中のお客様に付けて販売するので、私たちの製品は知らないところにまで広がっています。だからこそ、国内だけでなく世界中で特許を取っています。

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ブラック企業からの決別──下請けをやめた決断

取材担当:青山浩輔

今のような会社になるまでには、相当な過去があったと伺いました。

株式会社ハーモテック 代表取締役:岩坂 斉

元々は技術がないので、大手企業の下請けしかありませんでした。仕事をくださいと頼みに行くと、値段はいくらか、納期はどのくらいかと、単純に速さと安さを求められます。他社より10日で、値段も10%安くしますと。そうやって仕事を取るので、苦労しても儲かりません。

はっきり言えば、ブラック企業の最先端でした。安くて納期のない仕事を取らざるを得ず、働く人を不幸にし、不健康にする。こういう会社が社会にあっていいのかと考えたとき、これは辞めなければいけないと思ったんです。

同時に、本当にこういう会社を作りたかったんだっけ、とも思いました。社会にとっても社員にとっても幸せであるべきです。どうせ潰れるなら、それを目指して倒れようと決めました。

取材担当:青山浩輔

そこから、今の特許技術に出会われたのですね。

株式会社ハーモテック 代表取締役:岩坂 斉

安い仕事も短納期も受けないと決めた頃に、今持っている特許の元になる特許を紹介してもらいました。その会社さんが、非常に安い値段で特許を貸してくれたんです。「必ず世の中のためになるものを作ってくれ、それでいい」と。

改良を重ねると新しい特許が生まれます。その特許の出し方まで全部教えてくれた。その会社があったから今の会社があります。

その社長さんが「クマさん」という方でした。私たちの商品は「ハンド」、つまり手です。クマさんへの感謝を忘れたくなくて、商品名に「クマデ(熊手)」と付けました。熊手は縁起がよく、幸せやお金をかき集めるという意味もあるので、外国人にも喜ばれるし、忘れられない名前になると考えました。

取材担当:青山浩輔

特許の取得も相当ご苦労されたと。

株式会社ハーモテック 代表取締役:岩坂 斉

山梨県のアドバイザーに聞くと、何時間もかけて「特許にならない」と説明されました。諦めかけたとき、東京の特許事務所の方が「可能性がある」と言ってくれた。そこに賭けました。

特許庁から何度も突き返され、最後は裁判を起こす寸前まで行きました。それでも数年かかります。その間は会社が潰れる寸前でした。大手企業は特許が取れていないと買ってくれない。他社の特許を侵害していると、資金力のある大手企業側が訴えられてしまうからです。

展示会で出すと、物が空中に浮くのでみんな面白がってくれますが、誰も注文をくれない。それが続いて、やっと特許が取れてから注文が入り、今になりました。

実は、テレビドラマ『下町ロケット』に出てくる弁護士のモデルは、私たちの顧問弁護士の先生なんです。虎ノ門のビルを上がっていく描写も、そのまま先生の事務所のことです。私たちも、共同開発したものを大手企業が勝手に特許出願したという、ドラマと同じような経験をしました。人の出会いによって助けられ、今があります。

「物」ではなく「困りごと」を売る──コンサルティングメーカーの流儀

取材担当:青山浩輔

ホームページに「コンサルティングメーカー」とありましたが、その意味がわかった気がします。

株式会社ハーモテック 代表取締役:岩坂 斉

私たちの製品は高いんです。普通に作れば数万円で作れるようなものが、開発や特許のコストを乗せて何十万円で売られます。だから役に立たなければ誰も買いません。

大切なのは、お客様が何に困っているのかを常に知ることです。それを開発に変えて、また渡していく。これをぐるぐる回します。物を売るのは一番下の手段で、「こと」に変えなければいけません。「ことに変える」とは、情報を含めてお客様の困りごとを解決することです。

たとえば画鋲が欲しいと言われて「はい画鋲ですね」で終わってはいけない。「壁に穴を開けたくないのでは」と聞けば、穴を開けずに留められるものなら100円でも買ってくれる。物ではなく、困りごとなんです。それは聞かないとわかりません。

取材担当:青山浩輔

競合が大手でも選ばれるというのは、そこに理由があるのですね。

株式会社ハーモテック 代表取締役:岩坂 斉

競合には一部上場で世界的にも有名なロボット企業ばかりです。私たちは16人、相手は何万人。しかも私たちの見積もりのほうが高い。それでも注文が来ます。

なぜなら、欲しいものだけでなく、周辺の情報まで手取り足取り教えるからです。お客様が絶対に失敗しないように、圧倒的にサポートする。すると、相手が困っていることがもっとよくわかるようになる。見積もりの範囲外でお金がかかっても構いません。困りごとを解決することが私たちの仕事なので。

とことんサポートすると、お客様が「もういいよ、帰ってくれ」と言うくらいまでやります。その中で本当に困っていることが知れる。それこそが、次の開発と特許につながるんです。

エンジニアは、自分の技術で誰かの役に立ちたいという気持ちを必ず持っています。その気持ちで仕事をしてくれれば、自然と人の困りごとを聞きたくなる。それでいいと思っています。

株式会社ハーモテック|【株式会社ハーモテック】「「不安定という名の安定」を選べ──ニッチトップメーカーが挑む、製造業の常識への逆襲」

「製造業は儲からない」をひっくり返す──目指す未来

取材担当:青山浩輔

負けず嫌いという印象を受けたのですが、その原点はどこにあるのでしょうか。

株式会社ハーモテック 代表取締役:岩坂 斉

私は3月27日の早生まれで、どこに行っても背が小さく、勉強もできない。常に下を生きてきました。大学にも行けず、専門学校に行くしかなかった。頭が悪いだけなんです。

底辺を這いつくばっていた人間は、金持ちになって見返すしかない。ずっとそう思っていました。会社を起こしたときも「金持ちになりたい」だけだった。でも技術が伴っていないから、あのブラックな会社になっていった。あの見積もりの悔しさは忘れられません。あれをやる会社に戻るなら、もう辞めます。

取材担当:青山浩輔

5年後、10年後、どんな会社であり続けたいですか。

株式会社ハーモテック 代表取締役:岩坂 斉

規模は追いません。とにかく強い会社にしたい。実は息子がGoogleに勤めていて、その待遇のよさが許せないんです。福利厚生も尋常じゃない。悔しさと同時に「そこまで行ってみたい」と思いました。製造業は儲からないという常識をひっくり返したいんです。

搾取ではいけません。お客様の1000万円が割れてしまう問題を解決するのだから、40万円は安い。必要なお金をいただいて開発に回し、それを続ける。世界で勝つ会社にしたい。だから特許が重要なんです。

今考えているのは、24時間365日、世界中で営業ができる状態を作ることです。ノウハウを全てデジタル化してクラウドに貯め、タブレットを持った人間がお客様の話を聞きながら、その場で提案し、値段も納期も決められるシステム。営業のスキルを問わなくて済みます。ボタンを押せば加工まで自動で進むところまで作りたい。工場に3億円かけるより、こちらのほうが利益率も売上も上がります。

取材担当:青山浩輔

実現に向けての課題はありますか。

株式会社ハーモテック 代表取締役:岩坂 斉

一番は人が集まらないことです。図面を描くだけでなく、実際に自分で手を動かし、作ってみることを喜びと感じる人が欲しい。設計した人が自分で作り、お客様のところまで行く。そういうやり方だからです。高専出身の方が一番の希望ですが、私自身がこの頭の悪さでやってきているので、そこはあまり気にしていません。

  • 工業系でなくてもいい

  • 文系でも構わない

  • 経験がなくても30歳以下くらいなら余裕

やる気さえあればできると思っています。その気になれば何だってできる。自分がそうだから、みんなできると思うんです。

学生へ──「不安定という名の安定」を生きろ

取材担当:青山浩輔

選択肢が多い時代だからこそ、自分の道を決めづらい学生も多いと感じます。何かアドバイスをいただけますか。

株式会社ハーモテック 代表取締役:岩坂 斉

今の学生さんも、その親も、異常なほど安定を求めています。でも、世の中は地殻変動が起きているくらい揺れている。地震で地面が揺れているのに、その地面に一生懸命しがみついて安定したいと言っている。それでは揺れをそのまま受けてしまいます。

バランスボールの上に座っていれば、地面が動いても自分でバランスを取れる。これが「不安定という名の本当の安定」です。安定を求めて揺れる地面にしがみつくほうが、もっと不安になるんです。

大切なのは、常に自分に変化を起こすこと。チェンジとチャレンジ、これを繰り返す以外にありません。私は死ぬまでやり続けたい。何歳になってもそのエネルギーはなくしたくない。そのほうが楽しいはずです。

チャレンジし続けている限り、失敗は絶対にありません。やめた時に失敗になるだけです。もっと自由でいいんです。

取材担当:青山浩輔

自分のやりたいことを見つけるには、どうすればいいのでしょうか。

株式会社ハーモテック 代表取締役:岩坂 斉

情報を取りに行くのではなく、自分の中にあるものをしっかり見たほうがいい。「自分は何をしたいんだろう」と。それは原体験の中にあるはずです。

なぜその記憶が未だに残っているのか。それは自分がこう生きたいという裏返しかもしれません。原体験を探りながら、自分の中を見に行ってほしい。

若者の良さは、ひたむきさと謙虚さです。これさえあれば大体うまくいく。自分の思いにひたむきに、謙虚に企業へ行けばいい。もし扉が開かないなら、まだひたむきさと謙虚さが足りないのだと思います。吉田松陰先生の言葉のように、その志をしっかり前面に出していってほしいですね。

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